看護師にとって働く環境は、そのキャリア形成だけでなく、生活全般に大きな影響を及ぼします。特に、個人病院と総合病院での勤務は、待遇から仕事内容、患者との関わり方に至るまで、多くの違いが存在します。
この記事では、個人病院と総合病院それぞれでの働き方や待遇、業務内容について私が経験したことを元に、患者層のバリエーションや仕事内容、人間関係、給料、休日、福利厚生といった観点から解説していきます。病院ごとの特性を理解し、自身に最適な環境を見つける一助となれば幸いです。
先に私の経歴を紹介します。
私は総合病院の脳神経外科で3年、内科で5年間、計8年間3交代勤務をした後、看護師が3名しかいない個人病院で6年勤務しています。
個人病院と総合病院の定義
医療法に明記されている医療機関の分類は「診療所」「病院」の2種類です。
病院と診療所(クリニック)の違いは病床数(入院患者用のベッド)が20床以上あるかないかです。
20床以上ある医療機関を「病院」、19床以下を「診療所(クリニック)」と呼びます。
診療所は医師1名だけで開業可能です。一方、病院は最低3名以上の医師が必要であり、看護師などのコメディカルスタッフも診療科ごとに規定数配置しなければなりません。 診療所は外来診療・プライマリケアの提供、病院は入院診療・高度急性期医療の提供がメインです。
患者の違い
個人病院では、地域に根ざした診療を行うため、患者さんとの距離が近くなりがちです。健康な患者(ADLが保たれている)が基本ですので心身の負担は比較的に少ないです。そして地方特有のあるあるですが、地域医療をしているので知り合いが来る確率が総合病院より高いです。親族や保育園のママや先生に会います。
一方、総合病院では、さまざまな専門医が在籍しているため、より多くの患者さんと接することになりますが、一人一人と深く関わる時間は比較的短いかもしれません。急性期のケアが中心で、患者さんと接する時間も多岐にわたりますが、高度な医療を求める患者さんが多いため、その分専門的なスキルが求められる場面も多いです。認知症やADLがさまざまな患者の対応に苦労することもあります。
身体的な負担は全然違う
仕事内容
個人病院では、基本的な看護技術が中心となり、日常的な慢性疾患の管理や予防ケアが多くなります。私の眼科では術前の採血や手術の介助をしています。また、スタッフの数が少ないために、多職種連携も密に行う必要があります。看護師ではなくてもできる仕事(検査や事務作業)もこなします。
これに対して、総合病院では、看護師の仕事に集中して行います。医師とは関わりますがそれ以外の職種とは主に電話連絡になるので関わりが少ないです。病棟では清拭や投薬管理、採血、カルテ入力などが毎日押し寄せてきます。救急医療などの急性期の対応や、新しい治療への技術取得なども求められ、日々刺激的な環境であると言えます。こうした環境は技術向上には絶好の場ではありますが、配属される場所によっては精神的な負担も大きいことがあります。
また、認定看護師を目指すのであれば他施設や大学に研修に行くことがあるので個人の病院では厳しいです。 さらに、大きい病院では看護研究もほぼ強制でしなくてはいけないこともあるので時間外や家に持ち帰って作業したりと忙しくなります。
人間関係
個人病院の人間関係は、職員数が少ない分、お互いに気を使わないと仕事に影響が出る可能性が高いです。とても小さな世界になるのでムードを悪くする人がいると毎日顔を合わせないといけなくなり、しんどく感じるかもしれません。
総合病院では、多くのスタッフが働いているため、自然と職場の人間関係は希薄になりがちです。しかし、嫌いな人がいても三交代勤務だとなかなか会いませんし、数時間我慢すればと思うと乗り切れます。できるだけ関わりたくない場合は、この人と夜勤を一緒にするのはNGと上司に伝えておくと配慮もしてくれる場合もあります。 たくさん人がいるので気の合う友達は個人病院よりできやすいし、同期という横のつながりもできるのは大きい病院のメリットではないでしょうか。
給料
給料に関しては、一般的に総合病院の方が個人病院よりも高い傾向にあります。これは、総合病院が扱う医療の範囲が広く、高度なスキルが求められるからです。また、夜勤や残業が多い分、その分の手当てが充実していますし、個人病院よりもボーナスが多い傾向があります。
個人病院では、給料は比較的低めですが、勤務時間が規則正しく、プライベートの時間を確保しやすいことがメリットです。
給料だけを考えると総合病院の方がいいかもしれません。
休日の違い
休日や休みやすさについてですが、個人病院ではお盆や年末年始、祝日は休みになりますので、子どもや家族と休みを合わせやすいです。しかしスタッフが少ないため、子ども熱など急な休みは休みにくい雰囲気がありますし、他の看護師が休んでいると人が足りなくて物理的に休めなくなります。地味に嬉しいのが、先生が専門医の維持のために学会に行くと休診になります。
一方、職員が多い総合病院では絶対とは言えませんが急な休みも比較的休みやすい傾向で、1人休んでもなんとか仕事は回ります。しかし、祝日やお盆、年末年始も仕事があるので独身の内は問題ないですが、家庭を持ち子どもがいると子どもの休みに合わせづらいです。しかし絶対に休みたい希望の日に休みが取りやすいメリットはあります。
福利厚生
福利厚生は総合病院の方が充実している場合が多いです。大きな組織であるため、健康支援プログラムや産休や時短などの育児支援制度、従業員をサポートする制度が整っています。さらに社員旅行や食事会などのレクリエーションも総合病院の方が充実しています。
特別休暇も総合病院の方が病気休暇や子の看護休暇、忌引きなど充実しているので働くママにはありがたい制度です。そして一番大きな差は退職金制度かもしれません。総合病院特に公立の病院は退職金制度がしっかりしているので個人病院と比較すると、生涯賃金に大きな差ができるでしょう。
個人病院では、規模が小さいため福利厚生が限られることもありますが、その分職場の柔軟性(院長の匙加減)を活用して、従業員のニーズに合わせた対応をしてくれることもあります。
また院長先生が職員を大切にしてくれるところだと色々気を使ってくれます。
まとめ
最後に私の主観でメリットデメリットを簡単にまとめます。
個人病院(クリニック)
メリット | デメリット |
---|---|
動ける患者が多い 終わる時間が読みやすい 夜勤がない 昼休みが長い | 給料が低い 苦手な人がいると働きにくい 福利厚生が弱い 休みにくい |
総合病院
メリット | デメリット |
---|---|
キャリアアップができる 給料が高い 福利厚生がしっかりしている 休みがとりやすい | 残業が多い 業務が忙しい 夜勤がある |
個人病院と総合病院の違い、それぞれに良い点と悪い点があります。それぞれの特徴を理解したうえで自分の性格や生活環境に合った職場を選ぶことが重要です。
ただ1つ大事な事として、私たち看護師は、どちらの職場でも、常に新しい知識が求められる職業です。投資のように、自分の未来に賢く資金を「自己投資」することも大切です。例えば、自由時間を使って自分のスキルを磨くための勉強や資格取得に挑戦したり、節約術を駆使して将来の資金を蓄えたりすることも有効です。
これからのキャリアをどのようにデザインしていくか、しっかりと見つめ直す良い機会になるでしょう。一緒に、充実した未来を目指しましょう!
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